MIntシステムについて
人工知能(AI)を含む情報科学や計算機の活用による材料開発システムの開発が欧米でも活発に進められる中、内閣府SIP第1期「構造材料」、第2期「マテリアル革命」において、図1に示す材料工学の4要素であるプロセス・構造・特性・性能を計算機上で繋ぎ、AIを含む情報科学の手法を活用して材料開発を加速する「マテリアルズインテグレーション」という概念が提唱され、第5期科学技術基本計画においてはSociety 5.0を支える統合型材料開発システムとしてその推進が謳われています。この中で、主に金属系構造材料を対象として、NIMS及び東京大学を中核とした産学官のオールジャパン体制で開発されているシステムをMaterials Integration by Network Technologyの頭文字をとってMIntシステムと呼んでいます。
一般に材料開発は図1のプロセス、構造、特性、性能の間の連関を明らかにしながら、進められていきます。MIntシステムでは、AIや材料工学理論・経験則に基づくモジュールと呼ばれる様々な予測計算ツールを自在に接続することにより、プロセスから構造、特性を経て、性能までを一気通貫で予測します。さらに図2に示すように、逆に、AIを活用して欲しい性能からプロセスや化学成分を最適化することまで可能となっており、世界でも類の無いシステムとなっています。
図3はMIntシステムにおける計算の流れを示すパネル表示の一例ですが、組み合わせたいモジュールを画面上で直感的なインターフェースによってつなぎ合わせ、ワークフローと呼ばれる計算の流れをビジュアルに組み上げることで、必要な計算を自動で実行できることもMIntシステムの大きな特徴の一つです。
MIntシステムを用いることで、従来の実験を中心に行われてきたアイデアの検証作業を大幅にスピードアップできます。具体的成果の一例として、火力発電所で使用される耐熱高Cr鋼の溶接部材について、高温高圧力下で使用する際の寿命(クリープ現象による破断寿命)が高い精度で推定できるようになりました。これにより何千時間もかかる実験をわずか数時間の計算で代替することが可能となります。さらに、AIを駆使した最適化技術と組み合わせることで、欲しい性能から最適な材料・プロセス条件を効率的に探索できます。SIPにおける研究開発の事例では、これまで見逃されてきたような材料・プロセスの最適条件を探り当てる例も出始めています。このように、MIntシステムを用いることで、アイデアの検証を高速化でき、AIによる網羅的・効率的な最適化が可能となり、我が国の部素材産業の競争力強化が図れると見込んでいます。
参考資料
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